情報提供: ディスカバーたいはく4号
 所在地: 仙台市太白区茂庭
 連絡先: 太白区まちづくり推進協議会
 関連ホームページ: http://www.city.sendai.jp/taihaku/mati/discover/index.html

238 お茶孕(はら)みの子

 むかし、茂庭の梨野高田に、村人たちから親しまれている長者とその娘が住んでいた。
 ある日、修行の旅をしている若侍が一晩の宿を願い、長者の家に泊まることになった。若侍のすがすがしい態度に、長者と娘はいっぺんにほれこみ、
「小三次右衛門(こさんじうえもん)どの、どうか娘の婿どのになってくださらんか」
と長者がたのむと、娘も顔を赤らめながら一緒に手をついた。若侍は
「未熟な拙者をそのように見込んでくださり、かたじけない。しかし、修行中の身ゆえお許しくだされ」
といって、次の日、ていねいに礼をいって旅立ってしまった。
 娘はがっかりしながら、片付けはじめたが、なにを思ったか、そこにあった小三次右衛門の飲みのこしのお茶をいっきに飲んでしまった。

 そんなことがあってから、なんと、娘のお腹がだんだん大きくなっていった。
「なんだべ、赤ん坊でもできるんでねえべか。小三次右衛門どのの残したお茶ば飲んだからだべか」
と娘がいうのを聞いて、長者は
「そんな人の飲み残したお茶ばなんか飲んで、赤ん坊ができるなんてばかなことは―」
と頭をかかえた。しかし、何日か経って赤ん坊は生まれ、娘はお産のために死んでしまった。

 夏がきて、あの小三次右衛門が長者の家にまた立ち寄った。長者からの話を聞き、悲しみをこらえながら赤ん坊を抱きよせた。そして、あついので扇であおいでやった。
 ところがどうだろう、扇の風にあたったとたん、赤ん坊はスゥーと消えてしまったではないか。

 それからというもの
「長者さんどこの赤ん坊は、お茶からできた子で泡だったんでねえべか」
とうわさが広がり、人の飲み残しのお茶はだれも飲まなくなったそうな。

   


前の項目へ 次の項目へ