情報提供: ディスカバーたいはく4号
 所在地: 仙台市太白区茂庭
 連絡先: 太白区まちづくり推進協議会
 関連ホームページ: http://www.city.sendai.jp/taihaku/mati/discover/index.html

237 茂庭の里芋

 むかし、弘法大師という、えらい坊さまがいた。全国をまわり、ちょうど茂庭のとなり村にきたころ、疲れと空腹でへとへとになっていた。

 見ると、ひとりの老婆が小川で里芋を洗っているではないか。旅の僧は
「申しわけないが、拙坊に少し分けてくださらんか」
とたのんだ、が、
「あいにく分けるものなどない」
と老婆は意地悪そうにいった。

 しかたなく、また歩きはじめ、茂庭村に着いた時にはもう日もとっぷりと暮れていた。ふらふらと、明かりのともった農家の戸をたたき、出てきた女の人に
「申しわけないが、わたしは旅の僧です。何か、食べ物を分けてくださらんか」
とたのんだ。すると、女の人は
「それはそれは長旅ご苦労さまです。どうぞ」
と家の中に入れ、
「おいしいものではありませんが、わたしども夫婦がつくった里芋を召し上がってください」
と、ほくほくとした里芋を差しだした。
 旅の僧はたくさんごちそうになり、感謝しながら帰りかけると、亭主が出てきて
「よろしければ、一晩お泊まりください」
という。ありがたく、一晩やっかいになり、次の朝、元気になって夫婦にあつく礼をのべ、旅立っていった。

 こんなことがあってからというもの、茂庭ではそれはそれはおいしい里芋がたくさん採れるようになったということだ。

   


前の項目へ 次の項目へ