情報提供: ディスカバーたいはく4号 | |
所在地: 仙台市太白区茂庭 | |
連絡先: 太白区まちづくり推進協議会 | 電話: 022-247-1111 |
関連ホームページ: http://www.city.sendai.jp/taihaku/mati/discover/index.html |
233 宝物の片腕 |
むかし、坪沼のとなり村に甚兵衛という猟師がいた。甚兵衛は 「おれはだれも持っていねえ獣の手を持っている」 と自慢していた。 「なんの手だか、おれにだけ、そっと教えてくれ」 という村人たちに 「いや、これだけは教えられない。おれの宝物だからな。」と大事にしまってだれにも見せなかった。 五月五日の日のこと、甚兵衛の家に、村では見かけたことのないかわいい娘がやってきた。 「噂を聞いて隣村からきたんだけどだれも持っていないという宝物の手、見せてください」 とやさしい声で、なんどもなんども頼むもんだから甚兵衛もとうとう根負けして、見せてしまった。 「まあ、これはめずらしい宝物だこと。猿の腕でないの」 娘は、炉端のそばでその腕をなで回しながら見ていた。と、甚兵衛がちょっと目を離したすきのことである。 娘はサッと猿の姿に早変わり、片腕を大事そうにくわえたまま、自在鈎を伝わってスルスルッと、片腕のない猿は、あっという間に屋根の煙り出しから逃げていった。 びっくりして屋根裏を眺めていた甚兵衛は 「そうか猿の娘っこだったんだ。おれが腕なんか切り取ってしまってひどいことをした。猿も同じ生き物なのに―」 と、たいそう悔やんだ。 それからというもの、もうこんなことがないようにと毎年五月五日には陽のあるうちに菖蒲とよもぎを戸口にさし邪気払いをするようになったということだ |
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