情報提供: ディスカバーたいはく4号
 所在地: 仙台市太白区茂庭
 連絡先: 太白区まちづくり推進協議会
 関連ホームページ: http://www.city.sendai.jp/taihaku/mati/discover/index.html

230 阿古耶姫(あこやひめ)と松

 むかし、赤石橋は大雨が降るたびに押し流され、とても難儀していた。
 ある時、巫女のお告げで
「西北の山に松の大木がある。その松で橋を架ければ、大丈夫」
という。
 西北の方角を探すと、出羽(山形)の千歳山(ちとせやま)に驚くほど太い松の大木があった。赤石の人たちは大喜びしてさっそく切り倒そうとするが、松の木の堅いことったらない。斧がはじき返され、十人がかりでも五分の一しか切れなかった。
 次の日、さらに人数を増やしていってみるとなんと、昨日切った切り屑が幹に戻り、木はすっかり元通り。
 次の日も切っては戻り、また次の日も・・・。
 そこでみんなで相談し、切り屑を燃やしながら仕事をつづけたところ、五日目、ようやく松の木がドッシーンと音を立てて倒れた。

 一方その頃、千歳山の麓にある阿古耶姫の屋敷に、ひとりの若者がやってきた。
「わたしは、毎日お姫さまと顔を合わせていた松の木です。もうすぐ笹谷峠の向こうの赤石に運ばれます。お姫さまと会えるのも今晩だけです」
と、若者は涙を流し、暇乞いをして去っていった。

 それからまもなくのこと、松の大木は、数頭の牛に引かれて運ばれていくことになった。が、こんどは大地に根を張ったようにびくとも動かない。 赤石の人たちはすっかり困り果ててしまった。
 そこに阿古耶姫がきて、松の幹を撫でながら
「みんなのためです。どうか赤石の橋になってください」
と、優しく語りかけたところ、ふしぎやふしぎ、今まで動かなかった松の木が、いとも簡単にスルスルーッと動きだしたそうな。

 人は、この松のことを「阿古耶松」と呼んでいたということだ。

   


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