情報提供: ディスカバーたいはく4号
 所在地: 仙台市青葉区一番町1丁目13
 連絡先: 太白区まちづくり推進協議会
 関連ホームページ: http://www.city.sendai.jp/taihaku/mati/discover/index.html

229 剣豪と女中の試合

 むかし、仙台藩の二代藩主忠宗公のころのはなし。
 「松林蝙也斎(まつばやしへんやさい)」という名剣士がいた。日本三剣豪のひとりと称され、斬り込んでくる相手の太刀の上にヒラリと乗って、相手を打ってしまうというほど、身の軽い早業の持ち主で、名前も、御前試合の際に将軍家光が「蝙(こうもり)の飛ぶがごとし」とほめたことに由来するという達人であった。
 この剣豪が、年期三年と定めて若い女中を雇い、その際
「わしを驚かすことができたら、三年分の賃金を支払って暇をとらせてしんぜよう」
と約束した。女中は、どうしたら驚かすことができるだろうと、昼夜機をうかがうが、何といっても相手はひとの意を見抜く達人中の達人、なかなか果たせるものではない。

 そんなある日のこと、蝙也斎が帰宅し足を洗おうと、女中に湯桶を持ってこさせた。熱いので「水をうめよ」と命じ、女中がうめた湯に足を突っ込んだとたん、蝙也斎はびっくり、飛びあがった姿はまさに蝙のごとし―。
 女中は、なんと、水でうめずにひそかに熱湯をたしていたのだった。

 女中は約束どおり三年分の賃金をもらって家にもどったそうな。めでたしめでたし。
 ※凡手こそ、非凡手というおはなし。

※あまり策にとらわれない平凡な手段こそ、効果の出る手段となる、という意味。

   


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