情報提供: ディスカバーたいはく3号 | ![]() |
所在地: 仙台市太白区茂庭 | |
連絡先: 太白区まちづくり推進協議会 | 電話: 022-247-1111 |
関連ホームページ: http://www.city.sendai.jp/taihaku/mati/discover/index.html |
221 蛇の恩返し |
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昔、太白山の麓の村に弥助という若者とその両親が暮らしていた。父親の吾作は体が弱く、野良仕事は弥助と母親のお峯に任せていた。 暖かい春の日、吾作は何時ものように家で留守番役、弥助とお峯は、生出が森の八幡様にお参りをしてから畑に向かった。 途中、山道に気味の悪い太い縄のようなものが横たわっているのが見えた。弥助は側に行きびっくりしてしまった。 それは、岩石(いわいし)に頭を潰された大きな蛇だった。弥助は大声でおっかあに知らせて岩石を取り除いた。側に来たお峯は 「あれまあ可哀想に。こんなに太い蝮だがら、きっとお山の主でねえべがや」 と、座りこんで蝮に手を合わせた。 弥助は道端に穴を掘り蝮を埋めて、その上に岩石を乗せ蝮の墓にした。蝮の墓に手を合わせ、その場を去ろうとして二人は岩石を落とした山肌を見上げたら、小さな二匹の蛇が鎌首をもちあげて二人をじっと見ていたような気がした。 |
しばらく行くと、今度は蛇が木の枝に首が挟まってぶらんぶらんしているのに出会ってしまった。弥助は、木に登って枝を折って蛇を助けてやった。助けられた蛇はさっと草むらの中に潜り込んでしまった。 ある晩のこと、弥助は不思議な夢を見た。蛇が大きな口を開け舌を出しながら弥助を追いかけてきて、ついに足に咬みつかれたところで目が覚めた。 変な夢を見たなと思い天井に目をやると梁に蛇がぶら下がっていた。そこへ、吾作とお峯がやって来た。弥助が蛇を退治しようと鎌の先を近づけた途端、蛇はぽたりと居間に落ちて動かなかった。蛇は小さな蝮だった。 弥助と吾作は蝮を焼酎の入った徳利の中に入れ口を塞いだ。弥助は中で蝮が動いているように感じ、吾作にこの間の蛇のことを話した。吾作は 「この蛇は、岩石に頭を潰された蝮の主の使いだかも知れねえなあ。可哀想なことをしたなぁ」 と目を閉じた。弥助は蝮の入った徳利を神棚に供え、三人は毎朝その徳利を拝んだ。 しばらくして、吾作は蝮酒が不老長寿の妙薬であることを弥助とお峯に話した。体の弱い吾作に蝮酒を飲むといわれた弥助は、岩石で頭を潰された蝮や木の枝にぶら下がっていた蛇を助けたことを思い出し、 「蛇の恩返しだがも知れねえがら、蝮酒ば少しずつ飲んでみたらどうがなあ」 といった。吾作は、早速神棚の徳利を拝んでちびちびと飲み始めた。すると次の日から吾作の体はだんだん丈夫になり、弥助は 「これは、本当に蛇の恩返しに違いねえ」 と思うようになった。 蝮酒に助けられた吾作と弥助は、それから太白山に棲んでいる蝮を捕まえたりはしなかったそうだ。 |
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