情報提供: ディスカバーたいはく3号
 所在地: 仙台市太白区茂庭
 連絡先: 太白区まちづくり推進協議会
 関連ホームページ: http://www.city.sendai.jp/taihaku/mati/discover/index.html

220 蛇の脱けがら

 昔、茂庭の村に作造と女房の八重が百姓をして暮らしていた。
 八重はとても働き者で朝から晩まで作造と一緒になって田や畑の仕事に精を出していた。八重の一日は、まだ夜の明けない生出森八幡神社のお参りから始まった。これは作造の嫁御になってからもずっと続いていた。
 子供にも恵まれた八重には、誰にも話さない悩みごとが一つあった。それは、何時のころから自分の手にみず疣(いぼ)がたくさん出ていることだった。それも三つ四つとだんだん増えていく。
 越中富山の薬をつけても治らなかった。一番困ったのはお客にお茶を出すことだった。八重は着物の袖で手を隠すようになってしまった。

 そんなある日、八重は作造にこのことを話したら、
「どうしても気になんだら長町宿のお薬師さんに願でもかけたら」
といわれ、ふと生出森のお八幡さまにお参りしてお願いすることを思いたった。
 次の朝から八重は、お八幡さまに手のみず疣が治るように一心に祈った。しかし、毎日毎日拝んでも治らなかった。
 ある晩、八重は蛇を素手で捕まえている変な夢を見た。その蛇は蝮(まむし)のように思えた。八重が嫁御に来た時、昔から生出森は蝮が棲んでいると村人たちが話していたのを思い出したが、これまで八重はお参りに行って一度も蝮に出合ったことはなかった。
 次の日、いつものようにお八幡さまにお参りしようと拝殿の床を見ると白っぽい紐のようなものが落ちていた。よく見ると蛇の抜けがらだった。八重は恐る恐る拾い上げながら、昨夜の夢を思い出し、それを両手でしっかり握りしめて家に帰り神棚に供えた。

 二、三日して、八重は手のみず疣が治りかけてきたように思えて、不思議でたまらなかった。やがて「お八幡さまのご利益は、蛇の抜け殻がらだ」と気づいて、神棚に供えた蛇の抜けがらを押し戴いて手のみず疣をさすった。手のみず疣はきれいに無くなったので、お八幡さまにお供えものをしてお礼参りをした。
 しばらくして八重は蛇の抜けがらのことを村人たちに話した。すると
「八重さんは、お八幡さまを信心したから治ったんだっちゃ、蝮は神様のお使者で、お山を荒らす者を懲らしめる番人だべな」
などと語り合っていた。
 その後、八重は蛇の抜け殻を財布に入れて肌身離さず後生大事に持っていたら、お金に不自由しない暮らしが出来るようになったという。

   


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