情報提供: ディスカバーたいはく3号 | ![]() |
所在地: 仙台市太白区茂庭 | |
連絡先: 太白区まちづくり推進協議会 | 電話: 022-247-1111 |
関連ホームページ: http://www.city.sendai.jp/taihaku/mati/discover/index.html |
218 生出が森の狐 |
昔、生出が森に化け方の下手な狐が棲んでいた。この狐、人にうまく化けられないのは毛並みのいい太い尻尾が隠せないからだった。時々、村にやって来ては人に化ける修行をしていた。 ある日、狐が村里にやって来て、赤ん坊が泣いている作兵衛の家に入っていった。狐は赤ん坊の顔を見ながら太い尻尾を出し作兵衛どごのおっかあに化けて 「こーん、こん、こん。こーん、こん、こん」 と子守唄みたいな鳴き方をしてあやし始めた。赤ん坊はすやすやと眠ってしまった。こっそり隣の部屋から見ていた作兵衛とおっかあは狐に向かって思わず手を合わせた。 次に狐は仁助のわらす(こども)に化けて、庭先で豆がらを蹴散らしている鶏ば、 「こーん、こーん、こっ、こっ、こっ」 と鶏みたいに鳴いて追っ払った。やっぱり太い尻尾は出たまんまだった。 仁助は「生出が森の狐は神様みたいに偉いもんだ」と感心してしまった。 何日かたったある日、作兵衛と仁助がこの間の狐のことを村人に話しているのを聞いて、狐は嬉しくなった。しかし、狐に騙されたという村人も多く、狐はがっかりして、仲間の掟を破ったいたずら狐だなと思いながら生出が森に帰って行った。 ある晩、狐が茂庭へ行ってみると、隣村の孝助が酒屋にいた。狐は「今夜は孝助のおっかあに化けてみよう」と見ていた。 酔っぱらった孝助は、おっかあに食べさせる料理を作って貰い、我が家に向かった。ところが、さっき通った道をまた歩いていることに気がついた。「村で噂の狐だな。ようし騙してやるぞ」と、わざと大っきな声で 「おっかあ、ここの狐は本当に化けんのがや。早く提灯持って来てみろや」 といった。そうしたら、孝助に似た若いおっかあが小さな灯かりば持って走ってきた。孝助はびっくりしながらも狐だなと思い、 「茂庭で買って来た、早く食べろや」 といって料理を渡そうとした。すると狐が化けたおっかあはきょとんとした顔をしていた。茂庭を鬼と聞き間違えたのか 「これは鬼(茂庭)の料理だって?おっかあは食わねえ」 といって、手を引っ込めた。孝助はわざと 「鬼の料理だ早く食べろや」 といった。狐が化けたおっかあは頭ば横さ振って下ば向いてしまった。孝助は、おっかあの着物の裾が風もないのに動いている気がして、生出が森の狐に違いねえと思った。 酔いが醒めた孝助は、何時も村人の手助けをしている狐を脅かしているのがかわいそうになり 「鬼でねえ茂庭の料理だから食べろや」 といって、無理やり渡した。おっかあは、鬼が作った料理だと思いこんで怖くなったのか、尻尾の太い狐になって 「こーん、こん、こん」 と鳴いて生出が森の方へ逃げて行った。 孝助は、狐は俺の帰り道を心配して追っかけて来たのだと思った。我が家に帰ると、年寄りのおっかあは晩ご飯を用意して息子の帰りを待っていた。 生出が森の狐は、それからも時々村にやって来て化け方の修行を続けたが、毛並みのいい尻尾はやっぱり隠せなかったそうだ。 |
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