情報提供: ディスカバーたいはく3号
 所在地: 仙台市太白区茂庭
 連絡先: 太白区まちづくり推進協議会
 関連ホームページ: http://www.city.sendai.jp/taihaku/mati/discover/index.html

216 殿様と太白山(名取富士)

 昔、江戸城で東北の南部、津軽、佐竹、伊達の殿様たちが国元のお山自慢をしていたそうだ。はじめに、南部の殿様は
「南部には、城の真西に岩手山が見え、南部富士といわれる美しい山がござる」
というと、隣に座っていた津軽の殿様は
「津軽にも津軽富士と呼ぶ岩木山がござる。津軽富士に登れば海の向こうの蝦夷地まで見えますぞ」
と胸を張った。すると、佐竹の殿様は
「津軽殿の岩木山は、蝦夷地までしか見えませぬか、わが国元には出羽富士の鳥海山がござる。鳥海山からは蝦夷地ばかりでなく、遠くオロシャまで見えますぞ」
と自慢した。

 殿様たちのお山自慢を黙って聞いていた伊達の殿様はにこにこ笑いながら
「国元には伊達富士はござらぬが、仙台の城の真西に面白い形をした山が見えまする。
なんでもこの山は一晩で生まれた不思議な山で生出が森といわれ、駿河の富士山と同じころに出来た山だということでござる。
近くの海の何処からも見えるので漁師は船の目印にしているということでござる。それに、この山の麓の領民はお山にかかる雲の様子を見て、農作業をしているという話を聞いている。
この山に登っても蝦夷地やオロシャは見えぬが、伊達六十二万石の自慢の山でござる。南部殿、国元にお帰りのおりに奥州街道の中田の宿を過ぎると名取川の西に見える山でござる。ぜひ見て下され」
と話されたそうだ。伊達の殿様の謙虚な話を聞いていたほかの殿様たちは
「さすが名君、伊達殿でござる。」
と褒め称えたという話である。

 この不思議な山のことを城下町の人々は「太白山」と呼び、名取に住む人たちは「名取富士」とか「生出が森」と呼んでいる。

   


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