情報提供: ディスカバーたいはく5号
 所在地: 仙台市太白区茂ケ崎
 連絡先: 太白区まちづくり推進協議会
 関連ホームページ: http://www.city.sendai.jp/taihaku/mati/discover/index.html

206 大年寺山と小池真理子

 東京生まれ、『恋』で直木賞を受賞した小池真理子(一九五二〜)は、父親の転勤にともない一九六七年に宮城三女高校(現仙台三桜高校)に編入学し、高校時代を仙台で過ごしています。
 その小説『無伴奏』では、三女高と思われる高校を舞台にしたドラマも描かれています。


 私たちがやったのは早退ではなく、正しく言うと、「脱走」だった。学校はちょっとした刑務所か何かのように裏を小高い山に囲まれていて、出入り口は一つしかなかった。しかも外に出るためには、必ず職員室の窓の前を通らなければならない。職員室には、見張り役の教師が必ず一人か二人おり、いかに小さく身体を折り曲げて通り過ぎようとしても無駄だった。
 逃げるのなら、裏山をよじのぼって尾根伝いに進み、バス通りに出るしか方法はない。私たちはスカートがめくれるのもかまわず、ロッククライミングさながらに裏山の草深い斜面をよじのぼった。三人の中で一番、運動神経が鈍かったレイコは、よじのぼるたびに歌舞伎に出てくる童女のようなか細い悲鳴を上げた。私とジュリーは、彼女を黙らせるために、手を引いてやらねばならなかった。

   


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