仙台電波高専（現仙台高等専門学校）が仙台電波高校の名前で向山高校の場所にあったことをおぼえていますか。
長野県生まれ、『夏の流れ』で芥川賞を受賞した丸山健二（一九四三〜）は電波高校で高校時代を過ごし、在学中の思い出を「仙台のラーメンとホルモン焼き」（『日々の愉楽』所収）で次のように書いています。
いまでもときどき思い出して悔しがるのだが、高校時代をあの寮で過ごさなかったら、もっと背が伸びていたのではないだろうか。それはまあ冗談として、夕食後しばらくすると若い私たちはもう腹が減ってしまい、山の上にある寮を抜け出して近くのラーメン屋へ行ったものだった。一杯七十円のラーメンを食べながら、当時としてはまだ珍しかったテレビなどを観るのがひとつの楽しみだった。七十円といっても十数年前の七十円だし、なにしろこっちは高校生の身分だったから―現在の高校生たちは何と金持ちだろう―、毎晩通うというわけにはゆかなかった。
味としてはそう旨いラーメンではなかった。ただそこの店をやっている夫婦が私たちにとても親切で、狭い店がラーメン一杯で何時問も占領されていてもいやな顔ひとつしなかったばかりか。ときどき只で食べさせたりしてくれた。 |
