情報提供: ディスカバーたいはく4号
 所在地: 仙台市太白区西多賀
 連絡先: 太白区まちづくり推進協議会
 関連ホームページ: http://www.city.sendai.jp/taihaku/mati/discover/index.html

150 孝女お幾知

 いまから三百五十年くらいむかしの富沢村のはなし。
 治右衛門(じうえもん)の家は一町歩をたがやす農家であったが、治右衛門が行商のしごとでほとんど家にいないため、妻のお幾知(いち)が家のことを任されていた。家には舅も姑もいたが、舅は※馬喰(ばくろう)で遊び人、大酒を飲んでは嫁のお幾知にあたりちらすしまつ。そんな舅にたいしてもお幾知は利口にふるまい、田の仕事に精をだす毎日であった。

 ある日のこと、舅がたおれ、中風にかかり、思うように体が動かなくなってしまった。はじめ姑が夫の面倒をみていたが、こんどはその姑まで中風にかかってしまった。いやはや、たいへんなこと、舅と姑の食事の世話はもちろん、大小便の世話、そして田畑の仕事とすべてがお幾知ひとりの肩にかかってきた。
 にもかかわらず、お幾知はいやな顔ひとつ見せず、それどころか、見るにみかねて
「そんな苦労をしないで、実家に帰ったら」
という隣近所の人にも、
「罰があたります」
と答えていた。

 こうして十年の月日が流れた。この間もお幾知はいっしょうけんめい働き、割りあて以上の年貢米を納めていた。
 そんなお幾知の親孝行と年貢米のことを、村の世話人が役人に報告したところ、その話はすぐに仙台の殿さまへ。たいそう感心した殿さまはさっそくお幾知を城に呼び、お幾知を孝女とたたえ、ご褒美に金二両半と年間人夫五十人をあたえた。

 まもなくして、舅と姑はつぎつぎとなくなり、治右衛門も行商をやめて家に落ちついた。それからというもの、お幾知と治右衛門はご褒美の金で田を買い、いっしょうけんめいに良い米をつくって、殿さまに献上しながら、幸せに暮らしたそうだ。

※牛馬の売買をする人。

   


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