情報提供: ディスカバーたいはく4号
 所在地: 仙台市太白区長町
 連絡先: 太白区まちづくり推進協議会
 関連ホームページ: http://www.city.sendai.jp/taihaku/mati/discover/index.html

134 ふしぎな大名行列

 むかし、ご城下に、とってもきれい好きなおばあさんがひとりで暮らしていた。
 朝そうじをし、炉をきれいにして灰をならすのが毎朝のしごとだった。いつのころからか、炉においてある火消し壺のふたをとると、その中からふしぎな大名行列がゾロゾロとでてくるようになった。
 大名行列は
「したーに、したーに」
といいながら、炉の中をひとまわりし、壺のところにもどってくると、かならず、ひとりの侍が
「かきならす 灰は浜辺の 潮に似て」
と歌の上の句だけ読んで、少ししてからペロ ペロ ペロ ペロッと火消し壺の中にはいっていった。

 そんなことが毎朝つづいたある日、近くの物知りじいさまにその話をしてみた。すると、
「その侍は、あんたのご先祖かもしれない。歌の下の句をつけてあげたらいいんでは」
という。さらに
「どんな下の句をつけたらいいのか」
と聞くと、じいさまはしばらく考えてから
「波かと聞けば 松風の音」
という下の句をつくり、教えてくれた。

 次の日の朝、おばあさんが火消し壺のふたをとると、ふしぎな大名行列はいつものようにでてきて、炉の中をひとまわり。
 いよいよ、火消し壺にはいろうとする前、また、あの侍が
「かきならす 灰は浜辺の 潮に似て」
と上の句を読んだので、おばあさんは侍の顔を見ながら
「波かと聞けば 松風の音」
と下の句をつけてあげた。
 すると、侍はまんぞくそうにうなずいて、火消し壺の中にはいっていった。

 そして、次の日からふしぎな大名行列はでなくなったそうだ。

   


前の項目へ 次の項目へ