情報提供: ディスカバーたいはく4号 | |
所在地: 仙台市太白区長町 | |
連絡先: 太白区まちづくり推進協議会 | 電話: 022-247-1111 |
関連ホームページ: http://www.city.sendai.jp/taihaku/mati/discover/index.html |
133 橋をのんだ男 |
むかし、仙台のご城下に日本一の奇術師がきた。最後の日に、広瀬川にかかっている永町橋(ながまちばし)を呑んでみせると立て札を立てて宣伝した。 「なんだと、橋ば呑んでみせるんだって」 「んだ、そだ話ってあっぺがや。おれは大蛇や大ガマを口から出す術使いの話は聞いたことあっけど―」 「ほんとだべがや」 と、その話はまわりの村まで広がった。 いよいよその日。橋の近くには、日も昇らぬうちからおおぜいの見物人が集まった。オダツモッコの若者がひとり 「なんぼ日本一だって、この永町橋を呑むことはできねえべぇ。なんかタネあっぺ」 と、土手の大きい松のてっぺんから見物をはじめた。 さて、白鉢巻きにけいこ着姿であらわれた奇術師は、松の木の若者をジロリと見あげ、橋の方へ両足をふんばって 「エイエイッ」 と気合いをかけた、と、まるでうどんでもすするように、スルスルーと橋ば呑んでしまった。 「あんれ、あんれ」 「ウワー、ほんとに呑んでしまった」 皆んなぶったまげてしまった。 すると、若者は 「今のは呑んだんでねぇ、橋のうえば這ったんだ」 と叫びながら、木の上から下りはじめた。あと一尺で足がつくと思って若者が手をはなしたとたん、地面のうえにドシーン! ほんとは、まだ木の中ごろにいたのに、手をはなしてしまったのだ。 腰が立たなくなった若者に、ニヤリと笑いを残し、奇術師はゆうゆうと西の方に去っていった。 なんてことはない。奇術師は、見物人とは別に、若者にも術をかけていたのだ。 |
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