情報提供: ディスカバーたいはく3号
 所在地: 仙台市太白区坪沼
 連絡先: 太白区まちづくり推進協議会
 関連ホームページ: http://www.city.sendai.jp/taihaku/mati/discover/index.html

104 お六尺の勘兵衛さん

 昔、坪沼の勘兵衛さんといえば仙台から江戸にまで名のとおった「駕籠かつぎのお六尺」であった。
 勘兵衛さんの背丈は六尺三寸もありそのうえ並外れた力の持ち主でおまけに男振りもよかった。早速、仙台の殿様に召し出されて殿様の駕籠かつぎを仰せつかり仙台城詰めになった。

 ある年、殿さまは参勤交代で江戸に行くことになった。伊達六十二万石の殿様の行列は奥州街道を何日もかかって江戸に向かった。
 江戸に着いてみて、勘兵衛さんはびっくりしてしまった。西をむいても東をむいても人、人、人。
「芋のごった煮なら知ってっげんとも、人間さまのごった煮を見るのは初めてだ」
と呟いた。
 仙台の殿様の行列がいよいよ江戸城へ登城することになり、大手門の前まで来ると、そこは各地から集まった殿様の駕籠がぎっしりと並んで家来衆がその間をがしゃがしゃ動きまわっている。仙台の殿様の行列はとても通ることが出来なかった。いつになったら城の中に入れるのだろう。

 勘兵衛さんはいきなり諸肌脱いで、
 む、む、む、むっ 
ごつい腕を殿さまの乗っている駕籠にかけ「えい」とばかり一気に頭の上まで持ち上げた。勘兵衛さんは
「仙台侯のお通りでござる。どいてけろ、どいてけろ」
と大声で怒鳴った。みんながぶったまげている間に、勘兵衛さんは殿様の駕籠を差し上げたままゆうゆうと城内に入った。

 これがたちまち江戸中にひろがって勘兵衛さんの大力と男振りは大評判になった。
「勘兵衛さん。つぎの江戸入りはお相撲さんになっておいでなさい。きっと人気者の横綱になりますよ」
と、江戸の人たちは口々にすすめたけれども、勘兵衛さんは首を横に振って、大好きな坪沼を一生はなれることはなかった。

   


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