情報提供: ディスカバーたいはく4号
 所在地: 仙台市太白区郡山
 連絡先: 太白区まちづくり推進協議会
 関連ホームページ: http://www.city.sendai.jp/taihaku/mati/discover/index.html

94 毘沙門天

 むかし、伊達政宗公が仙台近郷を手中におさめようとしていた頃、郡山には粟野大膳という殿さまがおった。
 ゆたかな郡山の大地を手に入れたいと、しばしば北目城を攻めるのだが、城はいっこうに落ちない。兵たちは惨敗のたびに
「蜘蛛の巣が、垣根みたいに城をまいていて寄りつけねえんだ」
とか、
「黒い雲がどっと空から降りてきて、城をすっぽりかくしたわい」
などと、はなしていた。

 このふしぎな話を聞いた政宗公、密偵を送り大膳のまわりをさぐらせた。すると、大膳は郡山の毘沙門天をあつく信心しているという。
「ならば、わしもその毘沙門天に願をかけよう。もし大膳めに勝てたなら、わが城下に立派な毘沙門堂を建立しよう」
と勝利を祈願し、大挙して城を攻めた。
 願いがかなったのか、大膳の軍勢が力尽きていたのか、北目城はついに落ちた。

 喜んだ政宗公、さっそく毘沙門天を担いで城に帰ることにしたが、途中、急に不安が胸をしめつけた。
「うむ、毘沙門天のご利益はたいしたもの。しかし、だれかがこのわしを倒せと祈願したら、それも聞きとどけられるのであろう。持ち帰るのは※剣呑(けんのん)じゃ」
 政宗公はあたりの堀にエイッと毘沙門天を投げすててしまった。
 どのくらいたってか、子供たちが堀からこれを見つけ、やがて町の人たちの手でお堂が建てられた。それが今の荒町の毘沙門堂になったという。

 この毘沙門天さま、侍にはいや気がさしたのか、その後は戦の願かけには耳をかさなかったそうな。

※あぶない、という意味。

   


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