情報提供: ディスカバーたいはく3号
 所在地: 仙台市太白区秋保町
 連絡先: 太白区まちづくり推進協議会
 関連ホームページ: http://www.city.sendai.jp/taihaku/mati/discover/index.html

38 柳坂

 伝導の行脚(あんぎゃ)を続けていた慈覚大師は名取御湯のほとり磊々の岩山を去り羽州に赴くことになった。名取川を遡って西磐神の渡しを越え二口峠に近づいていた時、突然木陰から二人の異様な山男が現れた。
「俺たちはこの山の主、磐二磐三郎という兄弟だ。お前の着ているものをすっぽり置いてけ」
と腰の山刀で脅かした。
 慈覚大師はスラスラと法衣を解きついに裸一つになってしまった。慈覚大師は笑いながら
「お前達は愚僧から何もかも盗ったと思っているが、わしにはまだまだ高価なものを持ってる。悪さをしているお前達にはわかるまい」
といった。二人はどう考えてもわからないので慈覚大師に何とか教えてくれと頼んだ。慈覚大師は
「こっちにも頼みがある。それは、お前達が悪いことを一切しないということだ」
というと、二人は顔を見合わせややためらっていたが
「よし悪いことを止めるから話せ」
といった。

 慈覚大師は落ち着いた静かな声で
「それなら語って聞かせる。お前達は何もかも盗ったと思っていたろうが、わしの心ばかりは盗れなかったろう。どうじゃ他人の心を盗るには善い行いをしなければとれるものではないのだ」
と諄々(じゅんじゅん)と諭した。
 やがて、兄弟は背負っていた弓矢を投げ棄て、慈覚大師へ訓えを乞うた。

 その場所は昔、矢投坂といっていたが、今は柳坂と訛(なま)って呼ばれている。

   


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